レモンケーキとカフェラテ

ある東京で働く女の日記。思ったことを徒然。

読んでよかった2022

 

今年は60冊ほど読みました。

もっと読みたいなあ〜ネット時間をゼロにすれば倍増しそうなんだが、、それも実際は難しいよねえ。読んでよかった!というものを厳選して。来年もいい作品にいっぱい出会えるといいなあ!

1. 平場の月 朝倉かすみ

今年最初に読んだ本が結果一番心に残ったという。ぶっ通しで読んで、嗚咽するくらい泣いた。当方感受性が豊かなので泣く本はしんどいのですが、感情揺さぶられまくるのはやっぱりありがたい読書体験だなと思う。一言で言うと中年のリアルなラブストーリー、なんですが、年代関わらず人生って、恋愛って、幸せって、を考えられるからおすすめです。ここから朝倉かすみさんにハマった1年でもあった。『肝、焼ける』とか『田村はまだか』もおすすめです。

2. この世にたやすい仕事はない 津村記久子

本屋でたまたま手に取った『浮遊霊ブラジル』が良くて、津村さんにもハマりまくった1年だった。特に世の中のあんな仕事を自分がしてたら…と考える楽しさもあるこの本が一番津村さんの良さが出てて好きかなあ。津村さんの良さって、淡々と、でも優しく普通の人の大事な感情を丁寧に書かれることだと思う。結構書いてるシーンはリアルでシビアなんだけども。あとうっすらずっとユーモアが効いてて普通に面白い。『つまらない住宅地のすべての家』、『とにかく家に帰ります』、『現代生活独習ノート』も読みました、全部違って全部良い。

 

3. 無人島のふたり 山本文緒

昨年、自転公転を読んで山本さんの作品に出会い、というところに山本さんの訃報にショックを受けて、でもちゃんと山本さんは、最後まで読者に言葉を届けてくれた。もうただ読むのは辛いんだけど、こんな本は読んだことないし、この本を残してくれたことが山本さんの卓越さを示していると思う。『ばにらさま』『残されたつぶやき』『そして私は一人になった』も最高です。今『プラナリア』読んでます。私の言いたいことは山本さんが言ってくれてるよなあと思う中、今後は自分で言ってくしかないのかなと思っている。

 

4. 正欲 朝井リョウ

圧倒的筆圧。ダイバーシティっていうけど、それも非常に限定された想像力の中で言ってることに過ぎないんだということが突き刺さってくる、容赦なく。周りの人に読むの勧めたいと読んだ人が言うのは、勧めないと!という気持ちなんだと思う。

正欲

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5. 燕は戻ってこない 桐野夏生

これで桐野夏生にもハマった一年。近い将来ありそうなディストピアワールドの中で考える出産。この後読んだ『とめどなく囁く』もよかったですねえ。『グロテスク』『発火点』『ハピネス』『ロンリネス』も読みました。桐野夏生さんのすごいところは圧倒的に読むのやめさせないところだと思う。普通に面白すぎる、でナンバーワンです。

 

6. 一心同体だった 山内マリコ

幸運にも自分の名前をいれてもらったサイン本を手に入れ、1日で読んでしまった。山内マリコさんの書くものへの愛を再認識。各短編にふたりの女性の繋がりが出てて、その片方で繋がれていくという構成も見事だし、各短編の編まれ方もそれぞれでそれも見事。でもなによりもその手法ではなく、自分のことが描かれている、と思える共感性と写実性。そして全体を貫く女性への強いエール。一人でも多くの女ともだちに勧めたいなあと思った。連絡をもはや取らないが多くの時間を共にしたあの子にも、定期的に連絡を取れる希少な存在のあの子にも。

 

7. 空白を満たしなさい 平野啓一郎

死ぬことを考えることは生きてることの輝きを取り戻すことだと思う。後半の展開で主人公が心から生きたいと思い、心から自分の過去の行動を悔やむ気持ち、あまりにも胸が痛んだ。今自分が当たり前の顔をして生きていること、周りの大切な人が生きてくれていること、それがいかなる僥倖かと思う。また、人が自ら命を絶つとき、周りの推測がいかに的を得ないものなのか、あまりにも視野狭窄な結論に短絡的に結びつけようとしているかを改めて感じた。それも死の恐怖故か。

 

8. むらさきスカートの女 今村夏子

小説に対して、わかりやすいドラマを期待しない、それよりも空気感とか世界観を味わうのが好きなので、この小説に対しての好き嫌いはわかれることが想像できるが、私はこのふわふわしつつもひりひりする感じが独特で好みであった。文庫に収録されてたエッセイと解説も面白い。作者のいう小説を書くことに背中を押してもらう小説が蛇にピアスだったこともなんとなしの納得感あり。

 

9. 居るのはつらいよ 東畑開人

ケアとセラピーの違い。セラピーが求められる世界でのケアの難しさ。でもケアが必要なこと。それをストーリーに沿って語りかける面白さがあったし、最終章の問題提起ははっとさせられた。市場原理に全てを飲み込まれ、ケアが存在しづらい世の中を作っているのは、筆者でさえもそうだったように、私たち一人一人ではないんだろうか。

 

10. 評伝ナンシー関 横田増生

ナンシー関さん。なんとなく名前は聞いたことがあって、もう20年前に亡くなられたのだけれど、興味あり、この評伝を通して読むとすでにナンシーさんのファンに。不遜なことは承知で、私も幼き頃から毒舌だとか人の本質を見透かすみたいに言われてきたこともあり、ナンシーさんみたいにその高い能力をフルに活かして活躍された人に尊敬と憧れの気持ちを率直に感じる。ポストナンシーは生まれていないとのことだが、その存在の重要性は今の方が増しているのではないか。